【駐在員必見】米国から愛犬と一緒に日本へ帰国する方法

【駐在員必見】米国から愛犬と一緒に日本へ帰国する方法

米国駐在の日本人のための実践ガイド

はじめに

米国での任務を終え、愛犬と一緒に日本へ帰国する準備は、思った以上に時間と手間がかかります。この記事では、米国駐在員が愛犬を日本へ連れて帰る際に必要な情報を、実体験をもとにまとめました。

重要ポイント

犬を米国から日本へ連れて帰るには最短でも7ヶ月の準備期間が必要です。帰国が決まった時点ですぐに準備を始めましょう。

日系航空会社 vs 米系航空会社:知っておくべき大きな違い

多くの駐在員が見落としがちな重要な情報として、日系航空会社と米系航空会社のペットポリシーの違いがあります。

知っておくと得する情報

小型犬であれば、米系航空会社(デルタ航空・アメリカン航空など)では機内持ち込みが可能です。これに対し、日系航空会社(JAL・ANAなど)は基本的にペットの機内持ち込みを許可していません。

航空会社 機内持ち込み 持ち込み条件 料金目安(片道)
デルタ航空 キャリーケースが前の座席下に収まること。体重制限なし。 $125〜200
アメリカン航空 小型犬・猫。ソフトタイプのケージ。ビジネス/ファーストクラスでは約9kg以下。 $125〜150
ユナイテッド航空 キャリーケースが前の座席下に収まること。体重制限なし。 $125
JAL(日本航空) 貨物室のみ 約20,000円〜
ANA(全日空) 貨物室のみ 約20,000円〜

米国航空会社を選ぶメリット:

  • 小型犬であれば機内キャビンで一緒に移動できる
  • 愛犬のストレスが少ない
  • 到着後すぐに合流できる
  • 貨物室の温度変化や長時間の分離による不安を軽減できる
  • 経由便であっても常に目の届く範囲で移動できる

帰国までの全体スケジュール

米国から日本へ犬を連れて行くためには、綿密な計画と時間が必要です。以下は必要なステップとその期間です:

1

マイクロチップの埋め込み

ISO規格(15桁の数字)のマイクロチップを装着

必要期間: 1日

2

狂犬病予防接種(2回以上)

マイクロチップ装着後、生後91日以降に接種。証明書にマイクロチップ番号の記載が必須

必要期間: 30日〜90日(2回の接種の間隔)

3

狂犬病抗体検査

指定検査機関で血液検査を実施(0.5 IU/ml以上必要)

必要期間: 結果が出るまで約2週間

4

輸出前待機期間

抗体検査の採血日を0日とし、180日間の待機が必要

必要期間: 180日(約6ヶ月)

5

日本への事前届出

日本到着予定日の40日前までに動物検疫所への届出が必要

必要期間: 日本到着の40日前まで

6

輸出前健康診断

出発10日以内にUSDA認定獣医師による健康診断を受ける

必要期間: 出発前10日以内

7

米国政府機関発行の証明書(裏書き証明)取得

USDA発行の証明書(Form AC)を取得

必要期間: 約1週間

8

日本到着後の輸入検査

日本の空港で動物検疫所の検査を受ける

必要期間: 約20分〜1時間

重要事項

一つでも書類に不備があると、検疫で最長180日の係留検査または返送処分となる場合があります。すべての手順と書類を確実に準備しましょう。

米国の獣医とのコミュニケーション:日本人駐在員のための実践ガイド

ポイント1:USDA認定獣医を探す方法

一般の動物病院では国際証明書を発行できない場合があります。「USDA Accredited Veterinarian」の資格を持つ獣医師を探しましょう。

探し方: Google Mapで「USDA Accredited Veterinarian」と検索

または、現地のUSDAオフィスに電話して近隣のUSDA認定獣医のリストを問い合わせることもできます。

ポイント2:必要なことを伝える英語フレーズ

獣医とのコミュニケーションで役立つ重要フレーズ集:

日本への帰国準備について

“I need to prepare my dog to return to Japan.”

USDA認定について確認

“Are you a USDA accredited veterinarian?”

マイクロチップについて

“I need an ISO-compliant microchip (15 digits) for my dog.”

狂犬病ワクチン接種

“My dog needs rabies vaccination with the microchip number on the certificate.”

抗体検査依頼

“I need to get a rabies antibody test (FAVN) for Japan.”

必要書類について

“I will need Form AC and USDA endorsement for traveling to Japan.”

ポイント3:獣医訪問時に準備すべきこと

  • 過去のワクチン接種記録(特に狂犬病)を持参する
  • 日本の動物検疫所のウェブサイト情報を印刷して持参する
  • 必要な書類の様式をダウンロードして持参する
  • 日程(帰国予定日、各手続きの期限)を明確にしておく
  • 不明点はメモして質問リストを作成しておく

注意点

獣医師によって国際輸送の経験に差があります。「この犬は日本に帰国するので、日本の厳しい検疫条件を満たす必要がある」ことを明確に伝えましょう。

実際の体験談から:「アメリカでは普段通っている動物病院でもUSDA認定が無いこともあります。また国際証明書に詳しくない獣医も多いため、帰国用の健康診断は経験豊富な獣医を探して依頼することをお勧めします。」

必要書類一覧と注意点

必要書類 取得方法 注意点
マイクロチップ証明書 動物病院で装着時に発行 ISO規格(15桁数字のみ)であることを確認
狂犬病予防接種証明書
(2回分)
動物病院で接種時に発行 マイクロチップ番号の記載が必須
狂犬病抗体検査結果 指定検査機関による検査 0.5 IU/ml以上が必要。結果は2年間有効
輸入届出受理書 日本の動物検疫所に申請
(NACCS利用も可)
日本到着の40日前までに申請
輸出前健康証明書
(Form AC)
USDA認定獣医師が発行 出発10日以内に取得
USDA裏書き証明 VEHCSシステムを経由し
USDAから発行
獣医師の証明書にUSDAが裏書きをしたもの
輸入検査申請書 日本の動物検疫所から受け取り 事前に記入し日本到着時に提出

よくある失敗ポイント

  • 狂犬病予防接種証明書にマイクロチップ番号の記載がない
  • マイクロチップ装着前に接種した狂犬病ワクチンは無効
  • Form ACの「Date of identification」欄にマイクロチップを埋め込んだ日付ではなく、読み取った日付を記入してしまう
  • 抗体検査結果が0.5 IU/ml未満

体験者の声

「書類に不備があり、帰国時に愛犬と一緒に帰れない方を空港で見かけました。日本到着前に動物検疫所にEメールでフォームAC等の書類を送り、内容確認をお願いすることをお勧めします。私たちは事前に確認してもらっていたので安心して検査に臨むことができました。」

費用の目安(2024年現在)

項目 費用目安(USD) 備考
マイクロチップ装着 $30〜50 動物病院による
狂犬病ワクチン接種(1回) $19〜30 合計2回必要
狂犬病抗体検査
(初診料・採血・発送・検査料含む)
$400〜700 病院により大きく差がある
輸出前健康診断・証明書発行 $400〜600 USDA認定医での診察費
航空会社ペット料金 $125〜300 航空会社・クラス・輸送方法による
キャリーケース $50〜150 機内持ち込み用または貨物室用
総額目安 $1,000〜1,800 地域や利用サービスにより変動

費用節約のヒント

一般的に、輸入検疫手続きに詳しい動物病院は料金が高くなりがちです。しかし確実な手続きのためには、経験豊富な病院を選ぶことをお勧めします。アメリカの動物病院では事前に料金の見積もりを問い合わせることができるので、複数の認定病院で比較検討するとよいでしょう。

航空会社選びと機内持ち込みのコツ

米系航空会社で機内持ち込みを選ぶメリット

小型犬(約8〜10kg以下)であれば、以下の米系航空会社で機内持ち込みが可能です:

  • デルタ航空:体重制限なし、キャリーが前の座席下に収まること
  • アメリカン航空:一般的に9kg以下(ビジネスクラスでは追加特典あり)
  • ユナイテッド航空:体重制限なし、専用キャリーバッグ推奨
  • ハワイアン航空:11kg以下

キャリーケース選びのポイント

機内持ち込み用のキャリーケースは以下の条件を満たすものが必要です:

サイズ

航空会社の規定サイズ(一般的に45cm×30cm×25cm程度)以下

タイプ

ソフトタイプのケースで通気性が良いもの

強度

丈夫な素材で作られ、愛犬が中で快適に過ごせるもの

機能

防水性があり、安全なファスナーロック付き

出発前の準備

事前に犬をキャリーケースに慣れさせておくことが重要です。少しずつ時間を延ばして練習させましょう。また、フライト当日はタオルなどの馴染みのあるものをケース内に入れておくとリラックス効果があります。

予約時の注意点

  • 航空券予約時に、ペットを連れていくことを必ず伝える
  • 同じフライトで持ち込めるペットの数に制限があるため、早めに予約する
  • 経由便の場合、全区間でペット持ち込みができることを確認する
  • 予約後に航空会社からの追加書類や指示がある場合があるので確認する
  • ビジネスクラスはエコノミーよりもスペースが広く、愛犬にとって快適な場合が多い

体験者の声

「デルタ航空の場合、指定された大きさのソフトケースに入っていれば体重制限なく機内持ち込みが可能です。我が家はウィール付きの折りたたみ式キャリーケースを用意し、荷物が多い中でも移動が楽でした。また機内では座席の足元が一番広い窓側やバルクヘッドシートを選ぶと、犬のスペースを確保しやすいです。」

日本到着時の流れと注意点

日本に到着したら、以下の流れで輸入検査を受けます:

  1. 飛行機を降りる際、係員にペットを連れていることを伝える
  2. 機内持ち込みの場合はそのまま、貨物室預けの場合は航空会社カウンターで受け取り
  3. 入国審査の前に動物検疫カウンターへ行く
  4. 必要書類を提出し、家畜防疫官による検査を受ける
  5. 問題なければ「輸入検疫証明書」が発行される
  6. 通常の入国審査・税関へ進む

必ず持参すべき書類

  • 輸入検査申請書
  • 狂犬病抗体検査結果通知書
  • 輸出国政府機関発行の証明書(Form AC)
  • マイクロチップの証明書(念のため)
  • 狂犬病予防接種証明書(念のため)

空港到着後のトイレ問題

長時間のフライト後のペットのトイレは大きな心配事です。空港によって対応が異なります:

  • 成田空港:第1ターミナル南ウィングと北ウィングの中間にある屋外エリアが使用可能
  • 羽田空港:ペット用トイレエリアが設置されているところもある
  • その他の空港:到着時にインフォメーションカウンターで確認が必要

体験者のアドバイス

「フライト前の朝はいつも通り散歩して朝食を与え、フライト直前にも長めの散歩をして排泄させ運動させました。フライトの直前にまた少しだけ水を与えました。フライト中は意外と落ち着いていましたが、到着後はすぐに排泄させる場所を見つける必要があります。事前に空港の案内図を確認し、ペットトイレやインフォメーションカウンターの場所を把握しておくことをお勧めします。」

日本での次のステップ

日本に到着後、居住する市区町村で以下の手続きが必要です:

  • 市区町村役場でペット登録(登録手数料約3,000円)
  • 年1回の狂犬病予防接種(約3,000〜5,000円)
  • 日本の獣医師会に輸入検疫証明書を提示し、注射済票の交付を受ける

まとめ:成功の鍵

早期準備

帰国が決まった時点で準備を開始。時間的余裕を持たせることが最も重要です。

書類の正確性

全ての書類にマイクロチップ番号が正確に記載されていることを確認しましょう。

専門家に相談

USDA認定獣医と日本の動物検疫所に疑問点を積極的に相談しましょう。

愛犬と共に日本へ帰国することは、手間と時間がかかりますが、正しい準備と情報があれば確実に実現できます。特に米系航空会社を利用すれば、小型犬であれば機内持ち込みができ、愛犬と一緒に快適な帰国の旅ができるでしょう。

最後に

この記事は2024年の情報に基づいています。手続きの流れや申請方法が変わる可能性があるので、「動物検疫所:ペットの輸出入」のウェブサイトにて最新情報を確認してください。慎重な準備と正確な書類準備で、愛犬と一緒に安心して日本へ帰国できることを願っています。

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